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第29話 招待状は、燃やせない①

Auteur: 花柳響
last update Date de publication: 2026-06-24 06:00:04
 封筒の白さは、少しだけ冷たく見えた。

 榊家の紋が押された厚い紙。その下に、如月未央様、と印字されている。

 指で触れたわけでもないのに、紙の角が皮膚に当たったように、指先が小さく痛んだ。

「確認って、私に“送らないでください”と言わせたいんですか」

 そう聞くと、相良さんは表情を変えなかった。

 けれど、隣で車椅子に座る律の視線が、ほんの少しこちらへ寄った。

「違います」

 答えたのは律だった。

「送るかどうかを、あなたに決めてほしいだけです」

「それ、同じじゃないですか」

 言い切ったあと、誰もすぐには続けなかった。紙の擦れる音が、妙に大きい。

「似ています。でも、違う」

 律の声は低く、急かす響きがない。

 それがかえって困った。

 命令なら拒める。けれど、選べと言われると、紙一枚の重さまで自分で測らなければならなくなる。

 私は封筒を見下ろした。

 未央を呼ばなければ、穏やかに済むのかもしれない。司の顔も、隆一の顔も見ずに済む。

 けれど、それは見ないふりをして、扉の向こうに押し出しただけではないのか。

「送ってください」

「……本当に?
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